入江 洋 / Hiroshi Irie
東日本旅客鉄道株式会社
イノベーション戦略本部 デジタルビジネスユニット マネージャー
モビリティ変革コンソーシアム 事務局長
1991年東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)に入社。本社経営企画部、各支社で経営戦略や中長期計画の策定・推進、CSR、ESG経営推進業務等に従事。2020年より技術イノベーション推進本部(現イノベーション戦略本部)にて、モビリティ変革コンソーシアムの事務局長、コンソーシアム全体運営を推進。 2023年4月よりWaaS共創コンソーシアム事務局長。
横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程修了 博士(経営学) 。
著書「民営化企業の経営戦略と組織変革」交通新聞社、「WaaS(Well-being as a Service)モビリティ変革コンソーシアムによるスマートシティへの挑戦」LIGARE。
Judge’s selections
海と人で紡ぐ未来の物語賞
まず地域の人との連携、パートナーシップが素晴らしい。研究という分野に閉じず、障害のあるひと、漁業関係者、地域の働く女性、シェフがバトンをつなぎ、豊かな海の再現、新たな食文化を創り、循環型経済を実現していることに価値があると感じます。「なんの利用価値もない海が生産性を生む。活動を通じて関心がなかった人が少しずつでも関心を持ってもらえる」という漁業関係者のコメントはとても印象的でした。海藻という当たり前の存在に新たな価値を加え、地域の活力としていくことは、とても魅力的な活動といえます。ぜひ地域の食育ともつなげ、子供たちへも活動を連鎖させていけるとよいと思います。
文化の継承と新たな生活スタイルを両立させたで賞
畳は日本人としていつまでも残していきたい昔ながらの家具であるが、需要の減少や職人の不足から将来消滅してしまうおそれがある。現在、新規に畳の需要を増やすことは難しく、なかなか妙案がない状態が続いたなかで、この取り組みは今の時代に合わせた形に畳をリノベーションさせ、そこに職人の活躍する場所も与えることから、文化的にも環境的にもとても意義があるものと思う。「畳」に新たな可能性を与え、様々な形態に生まれ変わらせる可能性を秘めており、今後が非常に期待されるものである。
地球を作り直す偉大な工作賞
環境変化により、自然界のカキ礁の85%が消滅している状況は、海洋生態系の維持にとって極めて甚大な影響を与えている。この状況を回復させる手段としてのマザー・リーフ・レンガの製造・流通は、長期的に人類の脅威ともなりうるカキ礁減少対策として有効であり、かつSDGsの各目標とも整合している。また海洋生態系の回復に大きく貢献するものであり、中長期的に食料需給の改善に資すると考えられ、将来大きな可能性を秘めている実装技術であると評価できる。
また、世界中の物流スケールに則ったサイズかつ一般的な漁船での展開が可能であり、必要なスケーラビリティが確保できることは、海洋再生の標準化となり現実的なソリューションとしての機能も具備している。これらの理由からその展開の可能性が極めて大きいと考えられる。
日常の生活が環境改善活動で賞
太陽光発電についてはこれまで世界中で活用されているが、光透過型については発電効率と価格の点からなかなか展開が進んでいないのが現実である。この点を解決するため、汎用ガラスに塗布でき、赤外線と紫外線から熱変換を電力変換することで同じ熱エネルギー効率性能を持つこの製品は将来の大規模展開に大きな可能性を秘めている。また比較的安価(正確な価格情報は未記載だが)かつ世界のCO2排出量10%を相殺する潜在的な能力があるとのことで、CO2削減と事業性を両立させる技術として期待したい。
自然を身に着け自然とともに生きよう賞
「自然環境をくずさず新しいものをつくる」というコンセプトに感銘を受けた。新しいテクノロジーは、その便利さと引き換えに、環境汚染や不当労働などの悪影響も時には発生する。紙と人口林の間伐材を組み合わせ、紙糸を紡いでいく「TSUMUGI」。リサイクルするのではなくアップサイクルすることは、モノに新しい価値を与えるだけでなく、それに携わる人の意識までもアップサイクル、革新させるのではないかと思う。地球環境改善及び人の意識のアップサイクルを目指し、ぜひ様々な素材との組み合わせのアップサイクルを実現してほしい。