成瀬 友梨 / Yuri Naruse
建築家 / 成瀬・猪熊建築設計事務所 共同主宰
東京大学で建築を学び、2007年に成瀬・猪熊建築設計事務所を共同設立。「シェアする場をつくること」をコンセプトに、建築の企画・設計を行っている。主な作品に「LT城西」「Dance of light」。主な受賞に、2015年日本建築学会作品選集新人賞、第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 出展 特別表彰、大韓民国公共デザイン大賞 国務総理賞。主な著書に、『シェア空間の設計手法』、『子育てしながら建築を仕事にする』。
Judge’s selections
海から地球と人類を救う賞
新しい食文化を創出することが、海の生態系を豊かにし、雇用も創出するという、とても健全で、明るい未来を見せてくれるプロジェクトです。世界は食料問題に直面しており、日本でも静かに、しかし確実に大きな問題になることがわかってきています。そうした中で環境に負荷をかけないで食料を生産できる仕組みを構築しようとしていること、また新しい食文化として定着するよう調理法やレシピ開発まで取り組んでいることは素晴らしく、応援したい取り組みです。
お気に入りの瓶を大切にできるで賞
いつか使おうと溜まっていく空瓶。壊れたら捨てるしかない家電。そうした日々の小さなフラストレーションを鮮やかに解消してくれる、可愛らしくも発明的なプロジェクトです。付加価値を高めるため高性能化する家電は、実は使いこなせない機能がいっぱい。本当に欲しい最低限のシンプルな機能だけにすることで、構造もシンプルになり、修理も容易になる。とても合理的な思想によって作られてます。瓶の口はいろんなサイズがあるので、どう汎用性を持たせているのか気になりました。
脱プラスチック賞
処理しきれないプラスチックゴミという現実から目を離すな、という強烈なメッセージを訴えてくるプロジェクトです。私たち人間自身がプラスチックを食べたらどうだ、それくらいしなければ現状は打破できないのでは、と。プロトタイプのアイスクリームが問題を全て解決することはできなくても、私たちの思考を広げ、深度化するには十分な力があります。プラスチックのリサイクルやそもそも使用量を抑えることなど、どれも大切だが、視点を変えてこの問題を見ることの大切さを教えてくれるプロジェクトです。
美しいまちづくり賞
「街路を編む」というプロジェクト名のとおり、人々が手で編んだ美しいファブリックが街路の上空を覆い、夏の強い日差しを防ぐ日除けになっています。プラスチックを再利用した素材で、街を魅力的にし、観光客も増えたという。何より素晴らしいのは、この取り組みが10年という長期にわたって継続していること。それはイベントではなく文化になっているということ。この美しい街の景観が100年後の未来も継続していることを願います。
安全な水賞
水の濾過に必要な材料を練り込んだ粘土を複雑な形に3Dプリントすることで、安全な水を作ることのできる非常にシンプルな装置だ。本当は実際に水を濾過している様子を見せてもらいたかったのですが、コンセプトと繊細なデザインを評価しました。ディテールは水の濾過のために形が決まってくると想像しますが、大きな形としては自由に整形できるので、様々な場所で使っていける可能性があると思います。