木下 浩佑 / Kosuke Kinoshita
MTRL / FabCafe Kyoto マーケティング & プロデュース
素材を起点にものづくり企業の共創とイノベーションを支援する「MTRL(マテリアル)」と、テクノロジーとクリエイションをキーワードに多様なクリエイター・研究者・企業が集うコミュニティ拠点「FabCafe Kyoto」に立ち上げから参画。オンライン/オフラインのワークショップ運営や展示企画のプロデュースなどを通じて「化学反応が起きる場づくり」「異分野の物事を接続させるコンテクスト設計」を実践中。
Judge’s selections
「正のスパイラルを生み出すサービス設計」賞
ホテルや宿泊施設のコスト、産業廃棄物処理に対する課題解決を持続的に実現するのみならず、適切な期間でのマットレス交換による快適さや信頼性など宿泊者にとってもメリットの大きい、魅力的なサービスデザインだと感じました。オーストリア/ヨーロッパ以外の地域にも広がって、現地の寝具メーカーや観光産業などと連携することで、物流コスト・負荷を抑えて展開できる仕組みが生まれたら大きなインパクトが生まれるのではないでしょうか。
「排除から共生への変換」賞
私には、このプロジェクトが外来種の植物に対し、排除ではなくむしろ「素材化による共生」というアプローチをとっているように見え、それが非常に新鮮でした。外来種を無理をして使おうとするというよりも、ユニークな資源として捉え直し活用する態度。また、製品の流通ではなく、繊維産業の技術をベースにデザイナーや製造者が関わることのできる「ライブラリー」という仕組みとして設計されている点にも、発展と応用の可能性を感じます。
「民主的なインフラ」賞
水へアクセスする権利、水の循環をアシストするプロダクトでありソリューション。水質汚染に対して、化学的な方法だけでなく、地域で容易に入手可能で環境負荷の小さい素材と構造のデザインからアプローチしている点にまず感銘を受けました。そして、風土、歴史のなかで培われてきた文化・産業をベースにした技術が地域での暮らしを今後も持続可能にするために再解釈のうえアップデートされていることも素晴らしく、工芸とデザインの(再)融合から生まれる新しい価値はとても刺激的です。
「データドリブンでコラボレーション創出」賞
トレーサビリティの重要性は承知しつつ、そのために必要なデータの計測と共有が「簡単にはできない」ことが、製造業におけるサーキュラーデザイン実現のボトルネックになっていた…というケースは多いのではないでしょうか。そんな課題を持つ事業者を支援してくれるデジタルプラットフォームとなることはもちろん、計測と共有にとどまらず「データドリブンで既存のサプライチェーンの枠組みを超えたコラボレーション機会を生み出す」可能性に期待が膨らみました。
「電子デバイスを使い続けるために」賞
電子デバイスは「一人に一台必須」のインフラと呼べるような存在になっています。経済状況や居住地域によらず電子デバイスを持続的に所有できる権利を実現し、なおかつE-Wasteやレアメタルの枯渇の課題に対する解決策としての循環型の製品開発・再生・流通の仕組みを社会実装する仕組みはたいへん重要で、また、これらの資源の生産や廃棄を「他国・他地域に肩代わりしてもらっている」私にとっては、倫理的な連携の在り方を探らなければならないという気づきをいただきました。