Yeliz Mert
Global Landscapes Forum ナレッジシェアリングコーディネーター
社会的イノベーション、起業家、コミュニティ活動、エコシステム構築の経験を持つ、ソーシャルデザイナーかつカタリスト。リジェネラティブ農業、サーキュラーエコノミー、気候変動対策、多様性とインクルージョンの分野において、10年以上に渡り知見を重ねる。 現在、Global Landscapes Forumのナレッジシェアリング・コーディネーターとして、デジタルスペースを活用して世界中のランドスケープ回復の取り組みを強化し、知識の共有から現場での行動につなげるための道筋をつくっている。 以前はB Lab Europeで、ネットワーク管理、戦略、気候変動対策などを担当。また、Impact Hub Amsterdamでコミュニティカタリストとして活動し、ナチュラルスキンケアのビジネスを立ち上げた。持続可能な開発の修士号と、産業工学の学士号を取得している。 ポジティブな未来に向けて、コラボレーションの力を強く信じて活動している。
Judge’s selections
Next Generation Renewables Prize(次世代再生エネルギー賞)
とてもエキサイティングなプロジェクトです。特に、再生エネルギーへの移行がいかに急務であるか、そして表立って議論されない問題(素材の寿命の短さ、リサイクル性の問題、世界の貴重な森林生態系を損なうことになりかねない原料不足...)がいかに多いかを考えると、なおさらです。このプロジェクトは、考え方、リサーチ、全体的なアプローチにおいて、とても徹底しているところが気に入っています。また、透明性を重視し、業界の問題を新しい方法で解明し、積極的に解決策を提供しようとする姿勢、さらに、教育活動や意識改革にも取り組んでいます。欧州のサプライチェーンの問題にも一石を投じています。素晴らしい。
これは、よくある再生エネルギーのプロジェクトではありません。彼らは、さらに先を考え、再エネを取り巻くシステムをより良くしたいと考えているのです。
Best Bridge Builder Prize(ベストな橋渡し役賞)
Food waste reduction, (agricultural) material valuation and building collaborative capacity are valuable approaches towards tackling important issues connected to economical activities which affect ecological wellbeing. Decreasing food waste and better utilization of existing agricultural resources would help easing the pressure on land for more (food) production (from rice husks for paper to vegetable scraps for dye).
And in the process, these approaches can create awareness among economical players for better operational processes and business models, as this project has a particularly collaborative character. I think this very point makes this project standout. I really appreciate that the project is willing to take a co-created approach (which is not always easy!) and that it's building an ecosystem by connecting different players. We really need organizations which are investing their human resources and time into building collaborative capacity with others. There is no other way, of course. We need to work together to make use of each other's skills, processes, machineries, so we can collectively change our production systems into integrated and connected ones. This in itself is another way of going 'no waste'. :)
Building and maintaining relationships with others is so important in creating a circular economy system. This becomes especially tangible and strong when there is a common regional area where these players operate, which can help them build ties to each other, their natural environment and the society around it. I'm curious if you thought how you want to build and cherish your (business) relationships and build a regional connection?
食品廃棄物の削減と、農作物を含む資源からの新たな価値創出に、それを可能にするコラボレーション環境の構築で取り組むという提案で、これは人間の経済活動という、エコシステムのウェルビーイングを左右する重要な課題に直接介入する有効なアプローチです。食品廃棄物を減らし、既存の農業資源を無駄なく活用(もみ殻を紙に、野菜くずを染料に)できれば、作物など資源の収穫・採掘のために土地を開発するというプレッシャーは緩和するでしょう。
また、コラボレ―ション指向が際立つアプローチであるため、経済活動に参画する関係者に対し、より良い運用プロセスやビジネスモデルに対する意識を喚起する仕組みになっています。この点が、このプロジェクトを際立たせていると思います。このプロジェクトが、必ずしも容易ではない共創的なアプローチをとり、異なる当事者がつながったエコシステムを構築していることを本当に高く評価しています。私たちは、人材と時間を投入して、他者とのコラボレーション能力を構築する組織を本当に必要としています。もちろん、それ以外の方法はありません。お互いの持つスキル、プロセス、機械設備を活用し、生産システムを統合・接続されたものに変えるために協力する必要があるのです。この考え自体が、「ノー・ウェイスト(一切を無駄にしない)」の実践です☺
他者との関係を築き、維持することは、循環型経済システムを構築する上で非常に重要です。もしここに登場する当事者たちが同じ地域で一緒に活動できれば、その成果はより具体的かつ強力なものとなり、相互の絆だけでなく、自然環境やそれらすべてを取り巻く社会とのつながりを築くのに役立つでしょう。私は、このプロジェクトの提唱者が今後の展望として地域とのつながりを考えているかどうかに興味があります。
Renewed Tech Relationship Prize(テックと人との結びつきを再考賞)
While we started discussing fashion and food waste more and more, we're still slow in responding to the growing wicked problem of technological waste. Few companies take responsibility on the problem and offer solutions. Repair, take back and upcycling services are particularly important when it comes to technological products, because they aren't easily fixed by the consumers themselves.
It's responsible of this company to provide that additional service and sort out its own waste stream by upcycling. Using art as a way of enhancing the products also shows you how creativity can bring new life to an old product that could be easily thrown away in today's world.
It would be interesting to learn more about how much of their sales are upcycled this way to see its real impact.
ファッションや食品廃棄物について議論することは増えてきましたが、テクノロジー関連の廃棄物という深刻な問題への対応は、まだ遅れています。この問題に対して責任を持ち、解決策を提示する企業は多くありません。エレクトロニクス製品に関しては、消費者自身が簡単に修理できないため、修理、引き取り、アップサイクルを請け負うサービスが特に重要です。
なので、そうした付加的なサービスを提供し、アップサイクルによって自社製品由来の廃棄物の流れを整理するこの企業は、その責任を果たしているといえるでしょう。また、アートで製品の魅力を高めるというアプローチは、現代では簡単に捨てられてしまうような古い製品でも再生を可能にするという、クリエイティビティの力を示す良い例です。
このようなアップサイクルが、同社の売上にどの程度貢献しているのか、その実態をもっと知ることができれば、面白いですね。
Investigative Materials Prize(資源の探索賞)
I like this project because it opens doors to new possibilities that can change and adapt to the times' asthetic needs without causing wasteful harm on the way - that's mainly thanks to the nature of reusing the existing resources. Given that looking for virgin sources cause harm and unnecessary resource use, it's awesome that this project finds ways to mine it from existing sources. That's actually why I find this project so interesting: It sheds light on what's available to us in our proximity. Urban mining is a concept that can be developed so much further as a helpful instrument to help localizing our material cycles and lowering our impact.
Furthermore, this project has potential to build place-based relationships and community on the way, build consumer awareness on what urban mining is and what new ways we can think of engaging with raw materials.
I'm curious if this project considered creating exhibitons in schools, hospitals, train stations, public institutions... Because it has an artistic element which can help to communicate with others in a positive and intriguing ways.
私がこのプロジェクトを好きなのは、既存の資源の再利用という考え方で、時代の美的ニーズがいかに変わろうとも資源の浪費を伴わずに適応できるという新しい可能性を感じるからです。バージン原料の調達が有害であり、資源の浪費であることを考えると、このプロジェクトのように既存資源から原料を採掘する方法が見つかったのは素晴らしいことです。私たちの身近にあるものに注目しているのも、このプロジェクトのとても面白いポイントです。アーバンマイニング(都市鉱山)は、地域におけるマテリアル循環の完結や環境負荷の低減に役立つ手段として、さらに発展させることができるコンセプトです。
さらに、このプロジェクトは、地域に根ざした当事者同士のリレーションやコミュニティを構築し、都市鉱山とは何か、そしてバージン原料がどう扱われるべきかについて消費者の意識を高める可能性を持っています。
私は、このプロジェクトの提唱者が、学校、病院、駅、公共施設などでの展示を考えているのかどうかに興味があります。なぜなら、このプロジェクトにはアートな要素があり、ポジティブで魅力的な方法で他者とコミュニケーションするのに役立つからです。
Cultivating New Mindsets Prize(新たなマインドセット育成賞)
This is a wonderful project! In a world where citizens are reduced to become consumers, this project is offering a new way of consuming and producing. And not only that, they are teaching children both of these ways of engaging with life early on so they develop a healthy relationship to both of these. Besides, engaging with craftsmanship early on, raising materials awareness in children who are exposed to lots of screens and helping them understand consequences of their actions as human beings in this world are all so -very- valuable. When I see an intentional and purposeful project like this one, where children are being introduced to responsible consumption and production and sustainable ways of thinking, I can only get hopeful for a better world.
これは素晴らしいプロジェクトです!市民が単なる消費者という枠に押し込められがちな今の世界にあって、このプロジェクトは新しい「消費」と「生産」の関係性を提案しています。それだけでなく、双方との健全な関係を構築できるように、これら2つの活動への関わり方を早い段階から子どもたちに教えています。また、スクリーンだらけの世界に生きる子どもたちに、物理的な素材への意識を喚起するために、早くからクラフトマンシップに触れさせ、この世界に生きる人間として自分の行動の結果を理解させることは、とても価値のあることです。このようによく計画された、意義のあるプロジェクトを通じ、子どもたちが責任ある消費と生産、そして持続可能な考え方を学んでいるのを見ると、より良い世界への希望が湧いてきます。