安居 昭博
Circular Initiatives&Partners / 代表
サーキュラーエコノミー研究家 / サスティナブル・ビジネスアドバイザー / 映像クリエイター。Circular Initiatives & Partners代表。世界経済フォーラムGlobal Future Council 日本代表メンバー。ドイツ・キール大学「Sustainability, Society and the Environment」修士課程卒業。2021年6月「サーキュラーエコノミー実践 ーオランダに探るビジネスモデル」出版。第35回青年版国民栄誉賞 TOYP 2021にて、グランプリ「内閣総理大臣奨励賞」を受賞。
アムステルダムと東京の2拠点で活動し、これまでに50を超える日系企業・自治体に向けオランダで視察イベントを開催しサーキュラーエコノミーを紹介する。複数の企業へアドバイザー・外部顧問として参画。関係省庁や行政機関、企業向けに講習会の実施やメディア媒体を通じた発信活動も行う。
Judge’s selections
Rethink Prize
人口増加と気候変動に伴う世界食糧危機が懸念される中、これまで目を向けてこなかった可食資源への注目が集まっております。また、サーキュラーエコノミーにおいては「発想の転換」や一般大衆を惹きつける「デザイン性」、遊び心ある「プレイフル」なマインドが大切にされる中、「地球料理 -Earth Cuisine-」はこうした要素を包括した独創的で完成度の高いプロジェクトに映りました。すでに開催されたイベントの食事はどれも洗練されており、今後日本のみならず海外からも注目されるポテンシャルを秘めていると感じました。また、地域課題に目を向けることが自然とその土地の未活用資源の活用につながり、地域のユニーク性創出や活性化につながるよう感じられたことも評価させていただきました。今後が非常に楽しみな取り組みです。
Revolutionary System Prize
現状日本とヨーロッパの双方において、おむつは分別や再資源化が困難な課題として捉えられています。その中で「Diaper Cycle」は、使用素材と製造工程、利用中の環境負荷と機能性のみならず、使用後の土づくりも入念に考えられたプロジェクトという印象を受けました。今後使用済み商品による土壌改良によって環境再生や農作物生産の質や量の向上につながることで、他国からの需要も高まる可能性を感じます。日用品であることから既存の安価な使い捨ておむつ比での価格面での課題はあるかと思いますが、今後この取り組みが広がることによって価格は下がる可能性があり、これから世界へ与える影響と期待も込めて選出させていただきました。
PaaS Prize
PaaSモデルは「言うは易し、行うは難し」だと個人的に感じるのですが、「Bagasse UPCYCLE」は沖縄の地域性に合わせかりゆしウェアの洗練されたモデルを築いている印象を受けました。また、「Product Passport」を用いた商品情報の管理やそれに伴い可能となる新規サービスの展開も期待できると感じました。おそらく、沖縄でのかりゆしウェア市場だけでは規模に限界はあると思われるため、今後は近郊の周辺国市場も含め、PaaSモデルでどれほどの圏内で市場を築いていけるかが長期的にビジネスを安定させる鍵になるように感じております。
Future Community Prize
建築業は廃材量及び温室効果ガス排出量の観点から、サーキュラーエコノミーへの転換が最重要視される分野の一つです。「TaiSugar Circular Village」は居住区、食糧生産区、居間、台所と生活基盤となる複数のエリアを組み合わせたユニークなコミュニティプロジェクトです。それぞれの建物には解体が考慮された設計、マテリアルパスポート、照明のPaaSモデル、プレキャスト構造システム、アップサイクル素材の活用など、これからの建築において重要な取り組みが多々導入されており大きな評価の対象となりました。木材などの原材料の調達地域に関しては言及が見られなかったのですが、可能な限り近い地域圏の資材が活用されることが望ましいでしょう。現在の構想が具現化され進められる中で、さらに質の高いモデルとなり、世界中の建築分野から注目される存在になることを願っております。
Circular Platform Prize
まだ食べられる食材の廃棄は、企業にとってコストであり、また社会にとっては多大なる資源の損出である中、各国で有効な対策が急務となっています。「KURADASHI」はまさにある企業の廃棄食材を必要とする人につなげるプラットフォームを築いており、すでに大きな実績をあげています。サーキュラーエコノミーでは廃棄物への取り組みが経済、環境、人々の幸福度のすべての向上に寄与することが大切ですが、「KURADASHI」はそのすべてを包括したプロジェクトに感じます。フードロスには、各企業から廃棄を出ないようにする水道の元栓を閉めるような根本的対策と、蛇口から流れ出続ける水のように垂れ流しの状況にある廃棄食材を救う対症療法的対策の2つがあるように感じますが、「KURADASHI」がすでに後者で大きな実績をあげられていることで、同時に前者の元栓を閉める根本的対策も各企業間で広まってほしい願いもあります。
Influential Event Prize
「廃棄の多い日本だからこそ、本来活用できる廃材を利用する仕組みを整えることで、日本は資源大国になり得る」「PASS THE BATON MARKET」は「不良在庫」に焦点を当て、企業の悩みの種である廃棄物を宝のような資源に生まれ変わらせている。これまでにすでに複数回の開催実績があり、イベントも非常にポジティヴで誰もが足を運びたくなるような空間演出がなされている。企画・運営を担う企業が分野横断的なつながりを構築している点も、これまでにないイノヴェーションを生む土壌を築いており、これからも目が離せない取り組みである。